先頭で集団を引く吉田竜太。後方は副島正純
■東京パラ代表選考の行方は?
車いすマラソンは人気も高く、過去大会で複数の有力選手を派遣しメダル獲得の実績もある。東京パラには各国・地域から男女各3名まで出場できるが、現時点で日本代表内定者は2019年マラソン世界選手権で男子3位に入った鈴木朋樹(トヨタ自動車)しかいない。今大会の結果も内定選手の可能性を広げるものとはならなかった。
大会を主催した日本パラ陸上連盟の指宿立強化委員長は、「風はこのコースで一番気にした部分。気温も低く、体が動きにくいコンディションだったと思う。ただし、特に男子は(タイム狙いという)このレースの意図をよく理解し、最初から積極的に突っ込んでいた。現状ではベストパフォーマンスを出してくれた」と一定の評価を示した。
特別レースを総括した、日本パラ陸上競技連盟の指宿立強化委員長
実際、トップ争いをした洞ノ上、吉田、副島3名の10km通過タイム(10分31秒)はロードレース10kmの世界新とアジア新をマークする健闘だった。女子についても、喜納と土田の10km通過タイム(12分9秒)はアジア新で、その後もローテーションしながら安定したラップを刻んだレース展開には、日本チームとして「プラス材料」と期待を寄せた。
今後の代表選考のプロセスは大きくは2段階になる。まず、前述した4月1日付のマラソン参加資格ランキングでの選考で、現状は喜納だけが選考対象圏内だ。その後は6月中をめどにWPAより陸上競技分として各国に割り当てられる「ハイパフォーマンス割当枠」の数に応じて、選考委員会で代表推薦選手が選出される。車いすマラソンでは女子の土田とともにランキング7位につける男子の渡辺勝(凸版印刷)を軸に、他の種目と横一列でメダル獲得可能性などから検討されることになる。
東京パラリンピックのマラソンは大会最終日の9月5日(日)、東京都内を巡るコースで実施される。男女車いすの部、同視覚障害の部、男子上肢障害の部の5種目で金メダルが争われる。
星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 小川和行●写真 photo by Ogawa Kazuyuki