パラリンピック5大会連続出場のベテラン、森井大輝選手
■男子は大黒柱、森井大輝が躍動
男子の座位では、森井大輝(トヨタ自動車)が6戦全勝を飾り、安定した強さを見せつけた。コロナ禍を受け自宅にジムを作ってフィジカルを強化し、今季は海外転戦でなく、「国内に残って調整」という選択をし、じっくりと雪上練習に取り組んだ。その成果がしっかりと出た結果に、「6連勝は驚いているが、北京への自信につながる大会になった」と充実の表情で振り返った。
2002年ソルトレークシティー大会から5大会連続のパラリンピアンだが、長いキャリアの中では異例の国内調整を選んだ。取り組んだのは競技に不可欠なチェアスキーの調整で、特にサスペンションを見直したという。人間のひざのような部分で、雪面からの衝撃を吸収するクッションの役割をする。今季は思い切ってメーカーを変えたことで、「大きな入力があったときも、しっかり吸収してくれる一方、自分からも雪面にしっかり圧を加えられる」仕様に改良できた。「チェアとの一体感があり、バランスのとれたマシンになった」と好感触を口にした。
見据えるのは自身6度目となる北京パラでの悲願の金メダル獲得だ。コロナ禍でプレ大会も中止され、本番コースを滑るのはぶっつけ本番となる見込みだが、ベテランならではのポジティブさで前を向く。
「コースの映像を少し見ただけで全く情報がないが、中国選手以外は同じ条件だと思う。ドキドキしているが、経験が生きてくると思う。むしろ楽しみ」
今後の海外転戦はまだ不透明だが、国内にも切磋琢磨できるライバルたちがいる。技術系を得意とし、ソチパラリンピック回転の金メダリスト鈴木猛史(KYB)は森井とともに国内で調整を進めてきたが、今大会でも大回転で森井を上回るラップを出すなど調子を上げてきている。コロナ禍では自宅でのフィジカル強化に加え、ビデオでライン取りなどのイメージトレーニングにも励んだという。国内合宿でも、「マシンの調整など、森井先輩からいろいろ学べた」と手ごたえを口にした。
2010バンクーバー、2014ソチで金メダルの狩野亮選手は世界の頂点への返り咲きを期す
高速系のスペシャリストで、スーパーGではバンクーバーとソチ大会を連覇した狩野亮(マルハン)は最も注力する滑降のレースが国内では経験できないこともあり、1月にはスイス、オーストリアでの海外転戦を選んだ。海外渡航後2週間の隔離も経験したが、実戦感覚を磨くとともに、海外の厳しいコースにフィットするマシンの調整にも取り組む貴重な機会になった。「(レースで)ポイントも獲得でき、課題が見えたことも含め、収穫があった」と、世界の頂点への返り咲きを期す北京パラを見据えた。
星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto