コロナ禍でも果敢に海外遠征を選んだ三澤拓選手
■チーム・ジャパン一丸で、さらなる高みへ
「よいライバル関係」は立位チームにも見られる。2006年トリノ大会から4大会連続のパラリンピアン三澤拓(SMBC日興証券)はスーパーGで1勝、大回転で2勝を挙げた。コロナ禍でフィジカル強化に取り組みつつ、海外の斜面変化に富んだ難しいコースを滑ることで、「緊張感の中でパフォーマンスを高めたい」と海外遠征を選んだ。「おかげで、日本のコースには恐怖感なく、しっかりアタックできている。この先もまだ見通しにくいが、滑りの分析もできるようになっているので、集中力を切らさずにやっていきたい」
ベテラン三澤の全勝を阻み、スーパーGで1勝、回転で2連勝したのは20歳の高橋幸平(日体大)だ。2018年平昌大会に高校生で初出場後、日体大に進み、スキー部で鍛えられている毎日を、心身両面での急成長の要因に挙げた。体重も5kg以上増え、スキーにしっかり荷重できるようになり、滑りの安定感も増したという。
回転1戦目は2本目に攻めの滑りを見せ、三澤を逆転して勝ちをつかんだ。「すごく自信になった。先輩から吸収して学べているので、恵まれている」と感謝した。
三澤選手のライバルとして3勝を上げた20歳の高橋幸平選手
三澤も高橋について、「フィジカルも意識もアスリートっぽくなってきた。練習でもガンガン滑るので僕も緊張感があり、いい刺激になっている」と話し、相乗効果を口にした。
石井HCは今大会全体を振り返り、「例年は全員が同じ動きをとっていたが、今季は選手の意向を聞き、(海外と国内での)異なる取り組みをしたことで、ライバル心が芽生えたというか、(互いに)負けないという意思が見て取れた。それがよい結果につながった」とチームとしての手ごたえを語った。
また、今季の新たな取り組みとして強化指定チームと次世代強化チームの合同合宿も実施したことで、経験豊富なベテラン勢が若手にマシンの調整を助言したり、一緒にビデオを見ながら技術的な会話をしたり、チーム別に行う合宿とは「違った風景が見られている」という。
北京2022冬季パラリンピックは来年3月4日から13日まで、中国の首都、北京で開催される予定で、準備・強化が進められている。今季は重要なプレシーズンながら異例の対応を強いられているが、全体の底上げも図りながら「チーム・ジャパン」一丸となって難局に立ち向かい、さらなる飛躍を目指す。
星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto