「True Colors Festival」は日本財団が主催する、パフォーミングアーツを通して、障がい、性、世代、言語、国籍を超えて個性豊かな人々と、ともに楽しむ芸術祭。WITHコロナで、今年はバリアフリー・多言語対応のオンラインイベントに力を入れている。その一環で5月30日(日)13:00から、メディアアーティスト落合陽一さんの総合ディレクションによる「True Colors FASHION 身体の多様性を未来に放つ ダイバーシティ・ファッションショー」がTrue Colors Festival YouTube公式チャンネル(https://www.youtube.com/c/TrueColorsFestival)でオンライン配信される。
モデル、テック企業、ファッションブランドがひとつのチームになってそれぞれのテーマに向き合い、11組がランウェイに登場。約15分のショーを披露する。ショーの後には各チームのインタビューが公開され、その製作プロセスを明らかにしていくという2段構成。単なるファッションショーではなく、バックグラウンドを掘り下げるところが「True Colors Festival」らしい。
モデルはTrue Colors Festivalアンバサダーのりゅうちぇるさん、乙武洋匡さんのほか、身体障がいや知的障がい、妊婦や高齢者などライフステージによって身体に変化がある人など、さまざまな人たち。新しい身体像をつくりあげるのは、気鋭の日本人デザイナーやアダプティブファッションを牽引するブランド、身体の機能をテクノロジーでサポートする義足や車椅子メーカーなど。モデルは水面を演出したランウェイを歩き、多様な美のベクトルや個性を表現する。
「自然に見られるような生物が持つ多様性の美を、様々な身体性の美に見立てて、今回ファッションショーを構成することにしました。自然化するテクノロジーによって揺籃される身体の多様性とはなんなのか、参加者や聴衆の皆様とともに考えていきたいと思っています」(総合ディレクター・落合陽一さん)
人・モノ・自然・計算機・データが繋がり親和することで、新たな構造を生み出し続ける「デジタルネイチャー」という世界像を提唱する落合さん。「True Colors FASHION ダイバーシティ・ファッションショー」は、その世界観とシンクロする新感覚のショーになりそうだ。
参加クリエイターとそれぞれが取り組んだプロジェクトを紹介していこう。
■りゅうちぇる × 妊婦体験ベルト × MIKAGE SHIN
「ファッションは人と社会を幸せにする為に存在する」を理念にジェンダーレスなデザインを提案する進美影(MIKAGE SHIN)が、妊婦から男性まで着ることができるワンピースを制作。りゅうちぇるのファミリーから連想される、チューリップ(花言葉:正直な愛・博愛)とアイリス(花言葉:希望)のオリジナルプリントを施した。生き方やファッションで、新しい男性像や父親像を見せてきたりゅうちぇるが、妊娠体験ベルトとこのワンピースで、新時代の人間像を表現する。
■乙武洋匡 × OTOTAKE PROJECT × やまと × KORI-SHOW PROJECT
四肢欠損の乙武洋匡が着るのは、「OTOTAKE PROJECT」の義足を付けて歩くときも、車椅子のときも着られる和服。羽織丈から着物丈に、着丈をアジャストする機能でデュアルな着物が実現した。和装業界の老舗ながらアウトドアブランド、スノーピークとコラボするなど、革新的取り組みで注目されるやまと。伝統の手仕事を未来のテクノロジーで暮らしに落とし込む、山口壮大のKORI-SHOW PROJECT(こりしょう プロジェクト)がコラボ。この着物にはアウトドア用の撥水、防汚素材を使用し、帯ではなくベルトでアジャストするなど、モダンなアイデアが落とし込まれている。
■Blade for ALL × 義足のキッズランナー
「Blade for All(ブレードフォーオール)」は、義足メーカーXiborg(サイボーグ)の遠藤謙が手がけるプロジェクト。子どもたちが義足でも楽しく走り回れる日常を目指してスタートした。ブレードはピンク、イエロー、ブルー、グリーン、ブラックのカラフルな5色展開。自分で装着・交換できるように指導も行っている。先天性腓骨欠損の友岡海乃と杉本大地が、日常の風景を支える「無印良品」の服とブレードをコーディネートして軽快に駆け抜ける。Xiborgはパラリンピアンを目指す子どもだけでなく、走ることを楽しみたいという子どもでも気軽に手に取れるようにと、成形方法を工夫してブレードの単価を下げている。
■TOMMY HILFIGER ADAPTIVE × GIMICO・あべけん太・栗原慎子・益ノ進
スポーツとトラッドを融合したスタイルでおなじみのTOMMY HILFIGER。実はアダプティブファッションの先駆者でもある。トミー・ヒルフィガー自身が自閉症の子どもを持ち、育てた経験から、2016年に障がいのある人でも脱ぎ着しやすい機能を搭載したTOMMY HILFIGER ADAPTIVE(トミー ヒルフィガー アダプティブ)をスタート。マグネットのボタンやジッパーを採用したり、開閉部をベルクロ仕様にするなど、障がい当事者とのコミュニケーションで常にブラッシュアップを続けている。義足モデルのGIMICO、ダウン症を誇りに思い啓発活動をするあべけん太、義手ナースとして働く栗原慎子、SNSを通じて障がいのある友達と交流する重症心身障がい児の益ノ進とその母がモデルとして登場。
■我妻マリ × ヴィンテージファッション × WHILL
70歳を超えて現役で活躍する伝説的モデルの我妻マリと、電動車椅子をスタイリッシュに進化させたWHILLの共演。我妻はモードの代名詞、ドレスとスーツを融合したハイブリッドファッションに身を包み、次世代型モビリティWHILLでエレガントにランウェイを移動することで「車椅子は障がい者のもの」という常識を変えていく。自転車のようにファッションとして楽しむ車椅子の未来を描く。
このほかにも以下のプロジェクトがランウェイを飾る。
■Mission ARM Japan × HATRA
上肢に障がいを持った人々のコミュニティづくりや情報を発信する、NPO法人Mission ARM Japanの理事長、倉澤奈津子と会員、石田あかりがモデル。空間としての衣服を提案するHATRAによる腕がないことを「不在」ととらえない機能的トレンチコートをまとう。
■Pippi × Ontenna × ANREALAGE
環境によって変化する服をテーマにテクノロジーを駆使したデザインで日本を代表するブランドに躍進したANREALAGEが、音の特徴を体で感じるアクセサリー型装置Ontennaとコラボレーション。聴覚情報を視覚情報に「翻訳」して明滅する斬新なアクセサリーをつけて、世界で活躍する聴覚障がいのモデル、Pippiがランウェイを歩く。
■濱ノ上文哉 × OTON GLASS × beta post
読み上げ機能を搭載したメガネ、OTON GLASSと、「観る人の思考を促すこと」を目的に掲げるファッションブランド、beta postによるコラボレーション。障がいのある人の世界の感じ方を、世界地図を二重にプリントすることで表現したリバーシブルコート。視覚障がい者のフリークライマー、濱ノ上文哉が躍動的に着こなす。
■GenGen × Live Jacket × KANSAI YAMAMOTO
着ることで音楽を体感できる、ジャケット型ウェアラブルデバイスLive Jacketを、渋谷の風景写真をコラージュしたテキスタイルやフリンジ、チェーンでKANSAI YAMAMOTOがアレンジ。水曜日のカンパネラのトラックメイカーとしても有名なケンモチヒデフミがサウンドを手がけ、難聴ダンサーのGenGenが内なるヴァイブスをダンスで表現する。
■武藤将胤(with ALS) × 01 × ALS SAVE VOICE PROJECT
東芝の音声合成アプリ「coestation」と、分身ロボット「OriHime」でおなじみのオリィ研究所が開発した視線入力技術を組み合わせた「ALS SAVE VOICE PROJECT」を使ってコミュニケーションを続けるALSクリエイターの武藤将胤。自身がプロデュースする“障がい者でもカッコよく着られる”機能的ファッションブランド「01 BORDERLESS WEAR」の新作、東信によるプリントデザインのリバーシブルジャケットを発表。
■ここね × kotoha yokozawa
「ここのがっこう」で学び、2015年にkotoha yokozawaを始動した横澤琴葉。再利用で即興的に制作する1点ものの作品を中心に展開するユニークなブランドとしてファンも多い。身体に縫い目があたらないようにポリエステルプリーツ加工を施してつくった装飾服に身を包んだ、重度障がいがある五十嵐ここねが、母によって装飾された車椅子で登場。
ショーは事前に収録されており、公開時にはオーディオガイドも付く。視覚障がい者向けの音声ガイドとともにWWD Japan編集長らがショーの様子を実況。ショーに続いて、落合さんが自ら各プロジェクトの参加者に話を聞いたインタビュー映像が公開される。日本語音声ガイド、日本語・英語字幕などの鑑賞サポートも完備し、多様な人々が楽しめるイベントに。
誰もが居心地のいい社会を目指して、開催されている「True Colors Festival」。今回のファッションショーから、個性の違う人たちがお互いの違いを尊重し、多様な身体像を認め合うことで、世界はもっと素晴らしくなるというメッセージを受け取るに違いない。ダイバーシティ&インクルージョンの本質を考える素敵なきっかけにもなりそうだ。
True Colors FASHION 身体の多様性を未来に放つ ダイバーシティ・ファッションショー
◇日時:2021年5月30日(日)13:00~
◇視聴方法:True Colors Festival YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/c/TrueColorsFestival
【True Colors Festival 公式サイト】
https://truecolorsfestival.com/jp/
Composition&Text:Hisami Kotakemori