守備の要、田中章仁(左)を振り切ってシュートするアルゼンチンのエスピニージョ。右は守護神、佐藤大介ゴールキーパー。©️JBFA/H.Wanibe
■機能した組織的な守備と、見えた課題
日本の強みとして力を発揮した組織的な守備は緻密な練習のたまものだ。ダイヤモンド型のブロックを作り、「面」で守る基本形だが、選手間の距離を詰めたコンパクトさを維持するため、練習では選手同士をゴムバンドでつなぎ、「適切な距離感を保つ」トレーニングを重ねたという。スピードやパワーで突破されても、2枚目、3枚目の選手がすかさずカバーできる。
日本の守護神、佐藤大介キーパーも、「選手がよく走り、(相手選手と)いい距離感で1対1を繰り返し、事前に(ピンチを)防いでくれているので、失点を抑えられている」と、磨いてきた組織的な守備を称えた。
なかでも、ダイヤモンドの底で守備の要を担った田中章仁の類まれな空間認知力と献身性は再三のピンチをしのいだ。「1対1では難しいところを組織的に守るといった部分は機能した。個人ではディフェンスから攻撃につなげることがやりきれなかったので、(今後は)そこを中心にトレーニングを積みたい。チームでは一つずつ課題をつぶして世界のトップレベルに近づき、(東京パラで)実力を発揮したい」と意気込みを口にした。
攻撃については前回大会と同じく5試合で3得点に留まった。前回は川村一人の得点だったのに対し、今回は川村が1点、黒田が2点を挙げたほか、佐々木ロベルト泉も積極的に攻撃参加した。今後はシュートの精度を高め、決定力を上げることが課題だろう。
強いフィジカルで守備でも貢献したブラジル生まれの日系3世、佐々木は、「悔しいところもあるが、みんなと一緒に(サッカーを)やることは楽しかった」と2019年秋のアジア選手権以来の国際大会を喜んだ一方で、前を見据えた。「これまではディフェンスをやっていたが、これからはオフェンスにも力を入れないといけない。シュートまでもっていく力はある。あとはフィニッシュのところを、もっと磨かないと」
また、今大会では全5試合をほぼ固定の5選手で戦い抜いた。高田監督は同様の連戦となる東京パラのシミュレーションと位置づけ、「固定したメンバーでどこまでいけるか試せるのはこの大会だけだった」と意図を説明。さらに、練習時から行っている心拍計のモニタリングなどから、「限界を迎えていたり、走り負けていた選手はいなかった」とし、科学的トレーニングなども駆使して培ってきた選手のフィジカルに自信を見せた。
ただ、東京パラ本番では熱中症や、接触プレーの多い競技のため不慮のアクシデントの懸念もある。今大会は、先発陣以外ではベテランの佐々木康裕と17歳の園部優月が出場機会を得た。特に園部は1分ほどの出場だったが、代表デビューを決勝戦で果たせたことは大きな経験となったはずだ。「(交代で)いつ呼ばれても100%出せるようにベンチで準備していた。せっかく呼ばれたチャンスは逃したくないと思っていたので、全部出し切るつもりで、最初から強気で自分ではプレーしたつもりです。少ないチャンスをものにして、すぐにでも得点が取れる選手になりたい」と、感想と目標を力強く語った。
【日本ブラインドサッカー協会公式YouTubeチャンネル】
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星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko