【#2道下美里(T12/視覚障がい)】
金メダルロードを突き進む世界女王
佐藤友祈に並び、絶対的な強さを誇る世界トップランナーに君臨しているのが、女子マラソン界のエース道下美里だ。身長144cmの小柄な体格を生かし、1分間に約240歩という驚異的なピッチ走法が武器。また、最も苦しいと言われる30kmから粘り強さを発揮できるのも強さだ。
視覚障がいのクラスでは、ガイドロープで結ばれた伴走者と42.195kmを走る。伴走者との息もピッタリの道下は、銀メダルに終わったリオパラリンピック以降は、圧倒的な強さを身に付けてきた。
2020年2月の別府大分毎日マラソンでは、自身が持つ世界記録を1分52秒更新。同年12月の防府読売マラソンではさらに9秒縮め、2時間54分13秒をマークするなど、リオ以降は3度も世界記録を更新してきた。
今年7月の大会では5000mに出場し、自身が持つ日本記録(18分48秒96)には届かなかったが、暑さの中で18分54秒09の好記録をマーク。本番に向けて順調ぶりをうかがわせている。
5年前のリオでは、表彰式で君が代を聞くことができず悔しくて涙を流した。その雪辱を果たすため、世界の頂点だけを目指してトレーニングを続けてきた道下。18、19年には本番と同じ9月に同じコースを試走し、イメージを叩きこんできた。東京大会ではトップでゴールし、トレードマークの笑顔で君が代を耳にするつもりだ。
<みちした・みさと>
1977年1月19日、山口県生まれ。三井住友海上所属。小学4年の時に難病を患い、中学2年の時に右目の視力を失う。その後、左目の視力も低下。26歳で陸上を始め、31歳の時に中距離からマラソンに転向した。2016年リオパラリンピックではマラソンで銀メダル。20年防府読売マラソンでは世界新樹立での4連覇を達成した。
写真/越智貴雄[カンパラプレス] 文/斎藤寿子