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2022.06.02 OUR PASSION 車いすバスケットボール 車いすテニス 車いすフェンシング バドミントン 車椅子バスケットボール 松永製作所 競技用車いす PR
「競技用車いす」のトップランナー 松永製作所

#26「誰もが自分らしく生きられる社会の実現に、車いす作りを通して貢献したい」 松永製作所

「チャレンジド・スポーツ プロジェクト」を掲げ、多彩なパラスポーツとパラアスリート支援に力を注ぐ「サントリー」と、集英社のパラスポーツ応援メディア「パラスポ+!」。両者がタッグを組み、今最も注目すべきパラアスリートやパラスポーツに関わる仕事に情熱的に携わる人々にフォーカスする連載「OUR PASSION」。東京パラリンピックによってもたらされたムーブメントを絶やさず、さらに発展させるべく、3年目のチャレンジに挑む!

 

1974年の創業以来、一貫して岐阜県の養老町に拠点を置きながら車いす開発に情熱を注ぎ続ける「株式会社 松永製作所」。多くの車いすバスケットボール日本代表選手たちをサポートし、また、同競技のイギリス代表チームとオフィシャルサプライヤー契約も結ぶなど世界規模で存在感を発揮している国産車いすメーカーが、大切にしているもの作りの矜持とは。

写真:松永製作所のエントランスの門

「競技用車いす」のトップランナー

松永製作所の創業は1974年。現社長の松永紀之さんの父にあたる松永茂之さんが、1964年の東京パラリンピックで様々な障がい者スポーツを見て、そこに携わる仕事がしたいという思いのもと車いすメーカーとしてスタートした。以来、現在にいたるまで幅広い福祉用品の製造を展開している。そんな松永製作所が、競技用車いすのトップシェアブランド「MAX PERFORMANCE」(以下、MP)の開発をスタートさせたのは今からちょうど20年前。まずはその経緯からうかがった。

 

「創業当時は3〜4人の従業員で、それこそ病院で使用するような鉄の車いすを作っていました。そこから20年ほどかかってようやくアルミを使った製作に取り掛かることができ、さらに数年かけて徐々にクオリティが高まってきたところで2002年から競技用車いすの製作を始めました。元々うちには障がいを持っている社員が何名かいまして、自分たちの乗りたい車いすを作ろう、という中で、スポーツをされていたお客様から『競技用は作らないの?』という提案をいただいたことがひとつのきっかけにもなりました」(MP東日本ブランドマネージャー 榎本和浩さん/以下、榎本さん)

 

そして現在、MPの製品は、昨夏の東京パラリンピックでも活躍した車いすバスケットボールの日本代表選手たちを筆頭に多くのトップパラアスリートたちの「足」を支えている。

 

「バスケ、バドミントン、テニス、フェンシングに入門用や体験用なども含めて、スポーツ用車いすは年間出荷数でいうと150〜200台ほど。基本的にフルオーダーメイドで選手1人1人の要望や寸法に合わせて作っていきますので、1台を完成させるまでに受注をいただいてから3ヶ月程度は要しますね」(開発部 開発課 廣瀬昌之さん/以下、廣瀬さん)

 

コミュニケーションが何よりも大切

開発過程で何より大切になってくるのが、選手1人1人との密なコミュニケーションなのだという。

 

「電話やメールのやりとりだけだとなかなか難しいところがあるので、可能な限り直接顔を合わせて会話をし、また彼らが実際に座っている姿も見ながら細かい部分を確認していきます。各競技の強化指定選手に関しては、代表合宿などに行って練習を見たりする中である程度、今この選手はこういうふうなことを求めているなというのがわかったりもします。そこで得たフィードバックに加えてこちらが感じた違和感なども伝えながらすり合わせていく形ですね」(製造部 課長・技師 上野正雄さん/以下、上野さん)

 

写真:松永製作所の工場内の社員のみなさん

(左から)今回取材に応えてくださった開発部の廣瀬昌之さん、製造部の上野正雄さん、MP東日本ブランドマネージャーの榎本和浩さん

 

順応性と軽さを同時に実現したセミアジャスタブル式

松永製作所の競技用車いす「MP」の何よりの特徴が、業界初と言われる「セミアジャスタブル式」を採用している点。それは具体的にどのような構造で、また競技者にどのようなメリットをもたらすのだろうか。

 

「そもそも車いすというのは強度を持たせることが第一優先となりますので、うちでもかつてはすべて溶接で繋げるフルリジット方式で作っていました。しかし、とくに競技用の場合はフルリジット方式だと選手1人1人の微妙な動きのニュアンスになかなか順応させづらいということで、次にフルアジャスタブルという高さや車輪の位置など様々な箇所を調節できる製法を試しました。すると今度は部品点数がかなり増えることで重量が出すぎて、どうしても試合になると軽いほうが有利になってしまうというジレンマが生じました。そこで、フルリジットとフルアジャスタブル両者の“いいとこ取り”をしようと。それがMPの特徴であるセミアジャスタブル構造です。主に車いすバスケ用になりますね」(榎本さん)
写真:骨組みとシートが組み立てられたアスリート用車いすと未着の車輪

写真:黒のフレームの車いすの接合部分のズームアップ

写真:シルバーフレームの車いすの接合部分のズームアップ

こちらがセミアジャスタブル式を採用したフレーム。順応性と軽さを同時に実現したMPの特徴だ

 

「フレームとフレームをボルト&ナットで繋ぎ、その繋ぎ目に複数の調節穴を設けて固定位置を自在に動かせるようにしました。その部分を調整することによって重心位置を動かし、選手個々の動きの特徴に合わせて旋回力を上げます。この構造を採用することで、すべて溶接で繋げるリジット式の車いすよりも微妙な歪みやフレームの“しなり”が生じるのですが、それが車いすバスケ特有のコート上での複雑な動きにフィットしてくれるのです。実際に競技では2012年のロンドンパラリンピックから使われ始め、2016年のリオ大会の前くらいからかなり使用してくれる選手が増えましたね」(廣瀬さん)

 

「フレームを作る工程に関してはすべて手作業です。だからこそかなりの経験を要しますし、技術に加えて職人のセンスによっても大きく変わってきます。うちでも現在は3人しか作れる職人がいないんですよ。工程で最も重要になるのが金属加工。つまりどれだけいい精度で溶接できるか。そこに重点を置いて人材の育成も行なっています」(上野さん)

 

写真:骨組みの溶接をしている様子

写真:車輪部分の作業の様子

技術とセンスに裏打ちされた職人技で手作りしている

 

自分たちの車いすが世界で躍動する

昨年の東京パラリンピックでは、車いすバスケットボール日本代表の多くの選手たちがそのMPブランドの車いすを駆りながらすばらしいパフォーマンスを発揮。彼らがコート上で躍動する姿こそが、「良質な競技用車いすを作り続けたい」という創作意欲に繋がっているそうだ。

 

「東京パラリンピックに出場した日本代表チームでは、男子は豊島英選手、川原凜選手、鳥海連志選手、赤石竜我選手、香西宏昭選手、藤本怜央選手、藤澤潔選手、髙柗義伸選手、女子では財満いずみ選手、清水千浪選手、藤井郁美選手、小田島理恵選手、平井美喜選手、萩野真世選手の車いすをうちで作らせてもらっています」(廣瀬さん)

 

「自分たちの作った車いすが世界トップの舞台で戦う選手たちに使われて、テレビでたくさんの人たちに見てもらえる。それはうちのスタッフたちにとって大きなモチベーションになりましたね」(上野さん)

 

近年は海外からのオーダーも増えている中で、2018年からはオフィシャルサプライヤーとして車いすバスケットボールの強豪イギリス代表の全選手に車いすを提供し、また同代表チームに専属のメカニックを派遣するなど、サプライヤーの枠を越えた強化戦略のパートナー的役割を果たしている。もちろん東京パラリンピックにも帯同して男子イギリス代表の銅メダルに大きく貢献した。

 

「リオの後、2017年頃でしょうか。香西選手がヨーロッパで乗っているのを見て興味を持ったということで、イギリスの選手2人から、日本で開催された大会で来日した際に試したいと言われたのが最初です。その2人のために作ったところ非常に満足してもらえたようで、それを機にイギリス代表と契約をすることになりました」(廣瀬さん)

 

写真:黒色のフレームの競技用車いす3種類

写真:黒色のフレームの競技用車いすに「R.FUJIMOTO」の赤い文字

こちらは車いすバスケットボール日本代表の藤本怜央選手、鳥海連志選手らが実際に東京パラリンピックで使用した車いす

 

サポートしているのはもちろんイギリス代表だけではない。日本代表においても、今回取材を受けてくれた上野さんが男子、結城智之さんが女子と、それぞれ松永製作所の社員が専属メカニックとして東京パラリンピックに帯同。大会を通じて献身的に選手たちの車いすのメンテナンスを担当し、大躍進を陰で支えた。

 

「今だから言えますけど、本当に大変でしたね(笑)。なにしろ男子に関しては結局決勝まで残ったので大会最終日までずっと帯同することになりましたから。選手たちはもちろん僕らにとってもこれまでにない経験でしたので、非常に学ぶことが多かったですね」(上野さん)

 

もちろん松永製作所が手がける車いすはバスケットボール用だけではない。バドミントンをはじめ様々な車いす競技に向けて、日々さらなる開発力の向上に努めている。またその過程で、パラスポーツシーンへの注目度の高まりも肌で実感しているという。

 

「盛り上がりはすごく感じますね。東京パラリンピックでは日本人選手のメダルもかなり目立ちましたし、今はパラリンピックだけでなく世界選手権などもニュースで取り上げられるようになりました。それに、多くの企業が障がい者アスリート雇用を採用するようになったことで以前よりも選手たちがより集中して競技に取り組めるようにもなりました。多くの競技で、今後はさらに技術が向上していくのではないでしょうか」(榎本さん)

 

写真:設計図

写真:さまざまな大きさや形の車輪が整然と並んでいる様子

 

車いす競技のアスリートたちにとって、車いすというのはまさに自身の競争力を高めるための唯一無二の道具。松永製作所では、レベルアップのためにより良い車いすを求めるアスリートたちのためにこんな新たな開発ビジョンも描いている。

 

「現在はアルミを使って構造や機能を工夫しながらフレームを作っているのですが、今の材料で機能を向上させ続けるにはそろそろ限界かなと感じているところもあります。そこで新たにカーボンの導入なども考えています。カーボンであれば配置によって部分的にしなる箇所とそうでない箇所をコントロールできたりもするはずなので、時間はかかると思いますが可能性を模索しながら将来的には挑戦したいと思っています。同時に車輪やキャスターの配置に変化を加えることでどのような性能が生まれるかなども検証しながら、よりよい競技用車いす作りを追求したいと思っています」(廣瀬さん)

 

写真:さまざまな大きさや形の車輪が天井近くに整然とぶらさげられている様子

 

もっと多くの人に「競技用車いす」を届けたい

なお、松永製作所は古くからこんな理念を掲げている。「人々が自分らしく生きることのできる社会の実現に、もの作りを通して貢献します」。まさに、今や社会通念になりつつある「共生社会の実現」、「ダイバーシティ&インクルージョン」といったワードとリンクする。

 

「車いすの性能が上がることと比例してネックになっているのが、実は価格なんです。今の工程で作るものだとどうしても1台あたり30万円から40万円ほどしてしまうので、例えば『これから自分も車いすバスケをやってみたい』と思う若い人がいたとしてもなかなか簡単に買える金額ではないですよね。だからうちでは価格を抑えた入門用の車いすも販売はしていますが、本当の意味でパラスポーツの裾野拡大に貢献するためには、少しでも安く、少しでも乗りやすい車いすをもっとたくさんの人に届けられるようにしなければ。そのために、トップのものと材質や基本設計は同じだけど生産コストを下げられて、かつ量産できるような仕組みを考えていきたいなと思っています」(榎本さん)

 

「その一環として貸し出しもやっています。まだレンタルというほどの正式なレンタルではありませんが、『いま5台ぐらいなら用意ができますよ』というような形で少しずつ始めています。また企画段階ではありますが、うちの会社が主体となって競技大会も開催したいなと考えています。その大会の中で車いすの体験会なども行ったり。今年12月に岐阜で開催することを目標に、今いろいろと動いている最中なんですよ」(上野さん)

 

話を聞けば聞くほど、また、工場内で働くスタッフや職人たちの充実した表情を見れば見るほど、松永製作所では誰もが車いす製作というひとつの「もの作り」に自らが楽しみながら取り組んでいることがひしひしと伝わってきた。彼らのような存在もまた、パラスポーツの普及・発展に欠かせない強固な土台になっているのだ。

 

写真:車いすとバスケットボールがセットになったフィギュア・青と赤1台ずつ

 

SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
サントリー チャレンジド・スポーツ プロジェクト
www.suntory.co.jp/culture-sports/challengedsports/

 

Photo:Takahiro Idenoshita Composition&Text:Kai Tokuhara

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