車いすテニスは1970年代に始まり、パラリンピックでは1998年のソウル大会で公開競技となり、1992年のバルセロナ大会から正式競技に採用されている。男子、女子、上肢にも障害があるクアード(男女混合)の3つのクラスに分かれ、それぞれのクラスで頂点を争う(パラリンピックにおけるクアードは2004年のアテネ大会から採用)。
試合は3セットマッチで行う。使用するコートや広さ、ネットの高さ、ラケットやボールは一般のテニスと同じだが、2バウンドでの返球が認められている点が大きな違いだ。また、クアードは腕の筋肉や握力が弱い選手がいるため、ラケットと手をテーピングで固定することや電動車いすを使用することが認められている。
車いすテニスは世界的にも知名度が高く、競技人口が多いスポーツのひとつだ。1989年に初めて車いすテニスの全豪オープンが開催されて以降、他の国際大会でも相次いで車いす部門が創設。2009年のルール改正を機に、四大大会の全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンでは、大会期間中に同じ会場で車いす部門が行われている。
日本代表としては、パラリンピック初採用のバルセロナ大会に3人の選手が参加。それ以降、前回の東京大会まですべての大会に選手を派遣している。2004年のアテネ大会では男子ダブルスで齋田悟司(シグマクシス)・国枝慎吾(ユニクロ)組が金メダルを獲得。同ペアは北京大会とリオ大会でも銅メダルを手にしている。男子シングルスでは国枝が北京、ロンドン、東京大会で頂点に立った。女子では上地結衣(三井住友銀行)がリオ大会のシングルスで銅メダルを獲得。東京大会ではシングルスで銀メダル、大谷桃子(かんぽ生命保険)と組んだダブルスで銅メダルと、単複ともに表彰台に上った。クアードは東京大会で諸石光照(EY Japan)・菅野浩二(リクルート)組が3位に入り、日本クアード界で初めてメダルを獲得した。
パリ大会の車いすテニスの会場は、全仏オープンと同じスタッド・ローラン・ギャロス。サーフェスはクレー(土)で、一般的にボールのバウンド後の初速スピードが遅く、跳ねやすい性質があるとされる。加えて、車いすの場合はこぎ出しは重く、ターンするときは車いすごと横滑りする特徴があり、動くほどに深く轍が刻まれ、そこにタイヤがはまってしまうこともある。技術的にも精神的にもタフさが求められるが、クレーコートならではの展開も見どころのひとつと言える。
パリ大会には男子4人、女子4人が出場する。日本は世界のなかでも強豪国のひとつに数えられ、とくにパラリンピック前哨戦ともいえる今年の全仏オープンを制し、2連覇を達成した男子の小田凱人(東海理化)、パラリンピック4大会連続出場で女子世界ランキング2位の上地はメダル有力候補に挙げられる。4年に一度の大舞台でどんなパフォーマンスを発揮するか、楽しみだ。なお、日本のクアード勢は惜しくもパリ大会の出場を逃している。
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文/荒木美晴