19年女子U25世界選手権でアメリカと対戦した柳本あまね選手(撮影・X-1)
ディフェンスで上回れるかがカギを握る日米戦
5月12日には、東京パラリンピックのグループ分け抽選会が行われ、日本はグループA、アメリカはグループBに入った。そのため、予選では対戦することはない。しかし、メダルをかけた大事な決勝トーナメントで激突する可能性があり、3大会ぶりのメダル獲得を目指す日本にとってはマークすべきチームの一つであることは間違いない。
では日米戦が実現した場合、日本の勝機はどこにあるのか。柳本は次のように語る。
「まず私たちが開幕までに、どこまでレベルアップできるかというところが重要になると思いますが、そのうえで一番のポイントは日本のディフェンスだと思っています。どのメンバーで来てもアメリカにはシュート力があることは間違いないと思いますが、そのなかでもスレット(警戒する選手)となるシューターに対しては必ず厳しくプレッシャーをかけること。高さはもちろんですが、リーチが長く、女子でもワンハンドでシュートを打ってくるので、たとえミスマッチが起こらなくても私たち日本人の手の上からシュートをしてくるんです。なのでプレスディフェンスだったり、ハーフコートに戻ってにしても高い位置からのディフェンスだったりと、いかにペイントエリア(ゴール付近の長方形の制限区域)の外にはじき出せるか。そして、スイッチトラブルなどのミスが起こらないように、5人の“合わせ”がかなり重要かなと。そういう意味ではこの1年で“合わせ”については自信を持ってきていますので、しっかりと守って流れを引き寄せたいと思います」
そして一番の要注意人物は、やはりホラーマンだ。
「シューターとしてはもちろんですが、司令塔としてもチームを牽引する存在ですので、ホラーマンが一番のスレットであることは間違いありません。彼女に気持ちよくプレーさせてしまっては、アメリカに流れがいってしまいますので、まずはそこをしっかりと止める必要があると思っています」
一にも二にも、ディフェンスがカギを握るとみられる日米戦。相手のスタミナや得点シーンを削り落とす、迫力ある日本のディフェンスが見どころの一つとなりそうだ。そして“グッド・ディフェンス”“グッド・リバウンド”から、アーリー・オフェンスへとつなげていくことで勝機を見出していきたい。そのオフェンスでは「全員が自分がスレットだという意識を持って、シュートを狙いに行くことが大事」と柳本は語る。
「厳しい試合になると思いますし、簡単に勝てる相手ではないと思います。未知数という部分でも怖い相手ですが、ただチームとして作り上げてきた時間や経験は日本の方が上。これまで積み上げてきたことを全員がしっかりと遂行すれば、必ず勝機は見いだせると思います」
日本が最大の武器とする“トランジション・バスケ”。柳本はその申し子とも言われている。ディフェンスからオフェンスへ、オフェンスからディフェンスへーー。展開の速いバスケでリオ金メダルチームを翻弄し、3大会ぶりのメダル獲得を目指す。
文/斎藤寿子