1960年にローマで開催された第1回大会から実施され、パラスポーツのなかでも世界的に知名度、人気度が最も高い競技として知られている。
ルールや使用するコート、ボール、リングの高さなど、オリンピックのバスケットボールとほぼ同じ。ボールを保持したままプッシュ(車いすを漕ぐ)する動作は2回まで。3プッシュすると「トラベリング」となる。また、「ダブルドリブル」がなく、2プッシュ以内にドリブル1回という動作を何度も繰り返すことができる。
1試合で1クォーター(Q)10分を4回行い、4クォーター(40分間)の合計得点を競う。4クォーターで決着がつかない場合は1回5分の延長戦(オーバータイム)を、決着がつくまで必要な回数行う。
クラス(持ち点)分けシステムが採用されており、各選手には障害の程度や運動機能によって1.0から0.5刻みで4.5までのクラスに振り分けられ、コート上の5人のクラスの合計が14.0以内に編成されなければならない。数字が低いほど障害が重く、高いほど障害が軽い。1.0~2.0の選手を「ローポインター」、2.5~3.5を「ミドルポインター」、4.0~4.5を「ハイポインター」と呼ぶ。
車いすバスケットボールではジャンプや、車いすから臀部を離す「リフティング」をした場合は、テクニカルファウルが科せられるというルールがある。そこでゴール下などでは、車いすの片輪を上げる「ティルティング」というテクニックを使って高さを出し、シュートやリバウンドをしたりする選手もいる
さらにディフェンスからオフェンスに切り替わった際にバックコートで相手選手の動きを止めることで、数的有利や高さのミスマッチを作ることができる「バックピック」は車いすバスケットボール特有の戦術である。
車いすバスケットボールを「イスバス」、両輪がハの字に取り付けられ、回転性が高い競技用車いすを「バスケ車」と呼ぶこともある。
現在、国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)には110カ国が登録(アジアオセアニア・28カ国、アフリカ・25カ国、ヨーロッパ・36カ国、アメリカ・21カ国)。4つの大陸ゾーンに分かれて予選や大会が行われ、4年に一度、パラリンピック開催の2年後に世界選手権が行われている。
ヨーロッパやアメリカ、アジアオセアニアではオーストラリアや韓国などでクラブチームによるリーグ戦が行われ、各国代表クラスの選手たちがしのぎを削り合っている。特にヨーロッパは盛んで、ヨーロッパのクラブ一決定戦「ユーロカップ」も開催されている。日本の選手も毎年、数人が海外のクラブチームでプレーし、技術を磨いている。
東京2020パラリンピックまで男子は12、女子は10あった出場国枠が、パリ2024パラリンピックでは男女ともに8と減少。2023年に開催された世界選手権の成績により各大陸ゾーンに振り分けられた4枠を各大陸ゾーンの予選で決めた後、初めて最終予選が行われ、残り4枠の出場国が決定した。
東京2020パラリンピックで史上初の銀メダルを獲得した男子日本代表はアジアオセアニア予選で敗れ、パラリンピック連続出場は12でストップした。一方、東京2020で3大会ぶりに出場した女子日本代表が最終予選を勝ち抜き、2008年北京以来、4大会ぶりに自力出場を果たす。東京2020以降、岩野博ヘッドコーチが就任し、メンバーも12人中5人が入れ替わった。主力は東京2020を経験した選手たちだが、高校生が2人抜擢され、最年少は16歳と若手も台頭。主にマンツーマンと、横一列になり相手の攻撃時間を削ることが狙いのシャドウを駆使したディフェンスを武器とし、ハーフコートディフェンスも磨いてきた。課題とされてきた得点力を発揮し、シドニー2000パラリンピック以来のメダル獲得を目指す。
文/斎藤寿子