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2020.07.18 Sportiva 車いすテニス
東京五輪&パラリンピック 注目アスリート「覚醒の時」〜車いすテニス・国枝慎吾 復活を遂げた全豪オープン(2018年)

「俺は最強だ!」の不屈のメンタル。国枝慎吾が2年ぶり全豪制覇で雄叫び

ケガを克服して全豪オープンを制した国枝慎吾

アスリートの「覚醒の時」――。

それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 

ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 

東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか……。筆者が思う「その時」を紹介していく――。

 

 

「New SHINGO is coming!」――新たなシンゴがやってくるんだ――。

 

真夏のメルボルンの青空の下で頂点を掴んだ彼は、高らかにそう宣言した。

 

これまでに得たグランドスラム・車いす部門シングルスのタイトル数は、すでに20を数えている。それでも彼は、勝利の瞬間に天を仰いで涙をこぼし、「今回の優勝が一番うれしい」と断言することをためらわなかった。

 

2018年1月。この時の全豪オープンの栄冠は、当時33歳の国枝慎吾が、実に2年ぶりに手にした21番目のグランドスラムタイトルだった。

 

「車いすテニス界の絶対王者」「ウィールチェアのロジャー・フェデラー」

 

それらの通り名で讃えられる国枝の、グランドスラム20回目のタイトルは絶頂期のなかでもたらされた。

 

2014年から2015年にかけて、シングルスでは負け知らずの6大会連続優勝(※当時ウインブルドンの車いす部門は、シングルスが開催されていなかった)。台頭する若手の波を押し戻し、再び築いた“第二次黄金期”の掉尾を飾ったのが、2015年9月の全米オープン優勝だった。

 

だが、リオデジャネイロ・パラリンピック開催年の翌年、ケガの試練が王者を襲う。

 

古傷の右ひじが痛みだし、悩んだ末に春にメスを入れる。だが、パラリンピックのシングルスでは準々決勝で敗退した。

 

その後も痛みは消えなかったため、抜本的な解決策を模索すべく、ツアーを離れてフォーム改造に取り組むも、答えはなかなか見つからない。ラケットを変え、グリップも見直し、試行錯誤を繰り返すうちに、2017年もグランドスラム無冠のままに過ぎていった。

 

「もしかしたらこのまま、新しいフォームは完成せずにキャリアが終わるのだろうか……」

 

復帰への疑念が頭をめぐる。

 

「打ち方を変えて、仮に痛みが消えても、それで勝てるのか? 痛みがなくても勝てなくては、意味がない」

 

それらの不安も胸を塞ぐ。だがそのたびに、彼は「それではつまらない!」と顔を上げ、持ち前の克己心とプライドでコートへ向かった。

 

さらにその時期に国枝は、恩師とも言える人物の門を叩いている。

 

それは、メンタルトレーナーのアン・クイーン。2006年に師事しはじめ、王者のメンタリティをともに構築し、国枝が世界1位に達した時もその傍らに立っていた、かけがえのない戦友である。

 

それから、10年……。再び頂点への険路を歩むなかで、国枝は「技術的にはよくなっている」と実感しつつも、「最後の最後で、自分を疑ってしまっていた」。

 

「どうにか変えたい」

 

そう思った時に真っ先に思い浮かんだのが、かつて「俺は最強だ!」のフレーズと信念を与えてくれた、メンタルトレーナーの姿だった。

 

約5年ぶりにタッグを組むと、頂点に至る苦しみも、その地位に居続ける困難も共有してきたクイーンの言葉は、心地よく身体の隅々まで染みわたる。

 

すでに備わっていた新たな技と身体に、最後のキーパーツである“心”が加わり、国枝は再び「俺は最強だ!」と信じて走り始めていた。

 

迎えた2018年。

 

国枝は開幕戦のシドニー大会で優勝するという、最高のスタートを切る。翌週のメルボルン大会では、長年のライバルであるステファン・ウデ(フランス)にフルセットで敗れるも、リベンジの機は直に訪れた。

 

それが、全豪オープンの決勝戦。決戦の場は、同会場の第2コートに位置づけられるマーガレット・コート・アリーナだ。

息苦しいほどの酷暑のなか、7,500人を収容するアリーナに、ウィールチェアが激しくコートを駆ける金属音と、両選手の荒い息使いが響く。とくに国枝は、大柄なウデが豪腕から放つ高く弾むスピンショットを、一打一打に裂帛の気合を込めて打ち返した。

 

常に、劣勢に追いやられながらの戦いだった。第1セットを奪われ、第2セットは取り返すも、第3セットはゲームカウント5-2と大きくリードを許す。

 

だが、この窮地にあっても、国枝は「自分を信じていた」といった。3度までも、1ポイント落とせば敗戦の危機に追い込まれるが、そのたびに「俺は最強だ!」と心の内で……いや、時に声に出して叫んだ。

 

驚異の粘りでゲームカウント6-6に追いつき、優勝の行方がタイブレークに持ち込まれた時、両者の心身の優位性は完全に逆転する。

 

タイブレークの中盤から終盤では、試行錯誤の末にモノにしたバックハンドでウイナーを連発。栄光へのチャンピオンシップポイントは、勝利の味を熟知する得意のフォアで掴み取った。

 

2年半ぶりのグランドスラム優勝を、周囲は「復活」と讃える。

 

だが、手術以降に技術面を大きく変え、戦術的にも変革を志していた国枝は、ここを「新たなスタートライン」だと定義した。

 

このメルボルンでの戴冠の約4カ月後、国枝は15年間師事したコーチと別れ、ネットプレーを得手とする元プロの岩見亮をコーチとし、攻撃的なプレーを志向する。その新たなスタイルを引っさげて、同年6月には全仏オープンをも制し、世界1位に返り咲いた。

 

New SHINGO is coming!

 

あの日、口にしたこの言葉を体現する国枝は、36歳を迎えた今も、世界ランキング1位の座に君臨している。

 

*本記事はweb Sportivaの掲載記事をバックナンバーを配信したものです。


【Sportiva webサイト】

https://sportiva.shueisha.co.jp/

内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

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