パネルディスカッションではITジャーナリストの林信行さんをモデレータに、東京2020組織委員会スポーツディレクターの小谷実可子さん、東京2020組織委員会アドバイザーの澤邊芳明さん、『SPORTS CHANGE MAKERS』日本代表で京都工芸繊維大学の横瀬健斗さん、パナソニックGame Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)の川合悠加さんが登壇。「スポーツ×テクノロジーでバリアを越えることはできるのか」をテーマに、Mirror Fieldについての感想も交えて、話し合いが進められた。
「20世紀にあった情報格差が、今ではスマートフォンによって平等になりました。身体的な分野では筋電義手の価格が手ごろになり、3Dプリンターの登場で子どもでもぴったりサイズの合う義手をつくれるようになるなど、テクノロジーの進化でさまざまなバリアが取り除かれています。今日のディスカッションでも、テクノロジーが新しい可能性を切り開いて不可能を可能にし、バリアを超えること、スポーツの感動や共感が元気を生み出すことが再確認されました。スポーツとテクノロジーが合わされることによって新しいことが次々生まれていることを実感した方も多いと思います。8月の最終プレデンテーションイベントにもぜひ注目してください」(林さん)
「Mirror Fieldはアバターの動きがかわいいですね。動きを通してリモートで参加している方たちの気持ちがわかり、一体感を感じました。私自身は10代でアメリカに留学したときに言葉や習慣の壁にぶつかりましたが、ジェスチャーを交えての会話や自分の流儀を通すことで文化交流が生まれ、乗り越えてきました。アーティスティックスイミングの世界は、スマホなどであらゆる角度から撮影した動画をチェックして演技の精度を高めたり、陸上での演技をCGで合成して水中で行っているように見せる国際バーチャル大会が開催されるなど、テクノロジーの恩恵を受けています。また、コロナ禍でアマチュアスポーツの大会が中止になりましたが、動画をオンライン上にアップすることでスカウトへの活路を拓きました。損失や打撃を受けても、知恵やアイデアを絞り、あきらめずに前を向くことでいろいろな可能性が広がったと思います」(小谷さん)
「18歳でバイク事故にあって頸髄を損傷し、車いす生活となりましたが、1995年にインターネットに出会って人生が変わりました。バリアなく世界とつながれるということに大きな衝撃を受けて、1→10(ワントゥーテン)という会社を設立しました。東日本大震災、コロナ禍と大きなできごとがあるたびにテクロジーが急速に広まっていきます。今やっと、世界中が協力して物理的バリアを超えていく段階になってきたと実感しています。Mirror Fieldはオンラインでも、アバターの反応で盛り上がりが可視化できるところに可能性を感じました」(澤邊さん)
「プロジェクトが始まった頃はフィンランドに留学していました。お互いに母国語ではない英語でコミュニケーションするのでわかりあえない部分が多く、オンラインになるとさらにわからない。スケッチを書いたり写真を見せたりしたほうがわかりあえたり。言葉以外にもコミュニケーションの方法はあって、そのひとつにスポーツもあると思います。僕はテクノロジーを使って、スポーツ観戦が画面を見るだけで完結するのでなく、体や五感を使って何か積極的なアプローチができないかと考えています」(横瀬さん)
「社会人になって社会課題という壁に向き合うようになりました。中でも女性のさまざまな課題を、家事から解放する家電を開発することで解決していこうと正対しています。今は未来のカデンをカタチにするGame Changer Catapultという社内の新規プロジェクトに参加して、SPODIT(スポディット)というスポーツの試合映像の自動撮影・編集・配信サービスの開発にも携わっています。これは子どものアマチュアスポーツを熱心に応援している保護者をターゲットに、観戦したいけどできない状況や、現場にいても撮影を担当して応援に集中できないなどの歯がゆさを解決するテクノロジー。いつでもどこでも、みんなが喜びを共有できるサービスを目指しています」(川合さん)
パネルディスカッションでは登壇者からさまざまなテクノロジーやイノベーションが紹介され、充実した内容になった。
【SPORTS CHANGE MAKERS】
https://www.panasonic.com/global/olympic/ja/sportschangemakers.html
Composition & Text:Hisami Kotakemori