トライアスロン女子(運動機能障がいPTS5)を1時間22分23秒の10位でフィニッシュ(写真:スポニチ/アフロ)
東京パラリンピック6日目の8月29日、トライアスロン女子PTS5クラスがお台場海浜公園で行われ、開会式で旗手を務めた谷真海(サントリー)が出場した。
スタートは午前8時31分。気温は29℃。曇り空で時折風は吹くもものの蒸し暑さが時間とともにぐんぐん増しそうな気配が漂う中、まずは得意としているスイム(750m)で力強い泳ぎを見せ、本来の彼女の障がいクラスであるPTS4よりひとつ上のクラスでの出場ながらも10人中5位でトランジションエリアに姿を見せる。
続くバイク(20km)は、2016年にトライアスロンに転向して以来、常に大きな課題として向き合いながら強化に務めてきた。大会前にやることはやってきたと手応えは感じていた様子だったが、やはりじわじわとタイム差をつけられて8位に順位を落とすと、強い日差しも出ていた最後のラン(5km)では10位まで後退。
消耗の度合いは色濃かった。しかしそれでも、最後は沿道の大会ボランティアやスタンドで見守る選手、関係者たちに手を振りながら満面の笑顔でゴール。
「苦しかったですけれど、それも含めてトライアスロン。今はこの場に立てて幸せな気持ちが大きいです。いつもならもっと悪いときもあるバイクで踏ん張れた分、その反動がランにきてしまって、本当に苦しかった。それでもここは東京、日本なので、最後まで粘る力をもらいました」
走幅跳でアテネ、北京、ロンドンと3大会に出場。そして結婚・出産を経てトライアスロンに転向し、悲願だった4度目のパラリンピック出場を叶えた。招致活動の最終プレゼンテーションでスピーチを行い、またアスリート人生の集大成としても捉えていた東京大会。しかし自身の障がいクラスが本大会から除外されたことによるカテゴリーの変更、コロナ禍による1年延期など幾度となく高いハードルが彼女の前に立ちはだかった。それでも彼女は若い頃から信念にしていた「限界への挑戦」を決して諦めることはなかった。ミックスエリアでは涙を浮かべながらその険しい道のりを振り返った。
「自分のクラスがなくなって、何度も心が折れそうになりました。こんな理不尽はパラリンピックでは起こっていけないこと。でもこうしてチャレンジできたことがトライアスロン界にとっては大きな一歩になったのではないかと思っています」
そして最後は彼女らしく、詰めかけた報道陣の前で笑顔でこう締めくくった。
「支えてくれた家族には、これまで一緒に歩んでくれて感謝の気持ちしかないです。集大成というような姿は見せられませんでしたし、4度出場してメダルには縁のないパラリンピックでしたけれど、自分の中ではメダル以上の宝物をもらったと思っています」
取材・文/徳原 海